研究課題
赤外分光法の特長を活かした分子レベルの情報が得られる、膜タンパク質構造・機能解析システムを構築することが本研究課題の最終目標である。そのために、初年度はまず、表面増強赤外分光法(SEIRAS)用セルの作成およびSEIRAS測定条件の検討を行い、無電解メッキ法によるATR用Si結晶表面への金薄膜作成法を最適化した。また、短鎖リン脂質に着目した可溶化実験をバクテリオロドプシンに対して行った結果、一般に用いられる界面活性剤よりも安定な可溶化を実現できることがわかった。本年度は、構造・機能解析システム構築のための試料調製において、最も重要である可溶化した膜タンパク質の脂質二重膜への再構成法を中心に、研究を行った。特に、脂質二重膜に一定の強度を付与するために、脂質分子のアシル鎖の一部をフッ素化した新規脂質に着目した研究を展開した。その結果、新規部分フッ素化リン脂質は、非フッ素化リン脂質に比べて、脂質二重膜としては固いが十分な流動性を示すことがわかった。またバクテリオロドプシンを再構成したところ、9割以上の収率で再構成膜の調製を実現した。また各種分光測定の結果から、再構成膜中のバクテリオロドプシンは、天然紫膜類似の機能サイクルをもち、液晶相においても三量体を形成していることが明らかになった。また有機薄膜を用いて、表面増強赤外スペクトルの増強効果を調べた。これらの成果をもとに、次年度、膜タンパク質構造・機能解析システムの構築を目指す。
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