緑色硫黄細菌やヘリオバクテリアの反応中心はホモダイマー構造をとり、2方向の電子移動経路は等価に機能している。本研究は反応中心の2方向の電子移動の制御機構に着目し、緑色硫黄細菌の反応中心の物理化学的特性と機能を解明することを最終目標としてスタートした。互いに補完的な2つのプロジェクト(A:物理化学的特性の詳細な解析と、B:反応中心改変の実験系確立)を立案して3年間の研究を推進してきた。今後も引き続きホモダイマー型反応中心の反応特性を詳細に解析していくためには、人工的ヘテロダイマーに改変する実験系確立が急務である。全体の計画がやや遅れているため、最終年度である本年は、昨年度に引き続きプロジェクトBに専念することにした。これまでの研究により、反応中心標品中にはnon-PscA/His-PscA型の反応中心が含まれていることが明らかとなり、人工的ヘテロダイマー創出の足がかりが得られていた。本年はさらに異なる精製用タグを導入し、non-PscA/His-PscA型反応中心を実際に単離する方法を開発することに成功した。具体的には、authenticなPscA遺伝子の5'末端にStrep-tagを付加したあと、His-tagを付加したPscA遺伝子をrecA遺伝子領域に挿入した変異体"StrepA-△recA::(HisAB-P)"を作製した。変異体をフレンチプレスにより破砕後、膜画分を回収し、界面活性剤により可溶化した試料をNi-NTAカラムとStrep-tactinカラムに連続して通すtandemクロマトグラフィーを行った。M-NTAカラムから溶出した反応中心画分のバッファーを置換した後、Strep-tactinカラムに通すことにより、Strep-PscA/His-PscA型反応中心を分取することができた。しかしながらStrep-tactinとの親和性が極端に低いようで、ウエスタンブロッティングの結果からは大半が吸着していないことが判明した。そこで通常のプロトコールよりも低い塩濃度のバッファーを試みることにより回収率の改善がみられた。次年度以降は、もう少し溶出条件を検討することによって回収率を向上させるとともに、PscA遺伝子の改変に取り組む予定である。
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