研究概要 |
2010年度は,ルミラー膜を用いたバクテリオロドプシンについて定常光照射下でのプロトン輸送のpH依存性を重点的に解析した.従来pHを変えると紫膜がルミラー膜から剥がれる傾向があるため再現性の良い実験が難しかったが,pHの範囲を限定してpHを変える順番を工夫することにより,確実性の高いデータが得られるようになった.さらに等価回路から導かれる数式を整理して見やすい形にして実験結果と比較検討した.その結果,バクテリオロドプシンを電圧源と内部抵抗で近似した場合,内部抵抗はpHの影響を受けないが,電圧源の電圧はpH6~7でブロードなピークを示し,その両側では低下することが分かった.このことは光強度を変えた場合と比較して対照的である.そもそもバクテリオロドプシンの起電性を定量的に解析したような研究はあまり例が無く,起電力の定量的な発生貴女に関する定説は現在無い.今回の結果もすぐに解釈がつくものではないが,今後の本質的理解のために重要な基礎データであると考えている.一方,プロトンの出入りのタイミングを測るためのITO電極を用いる装置の出力が不安定であるという問題があったが,その原因がグラウンド側が不安定であることが考えられたので,増幅器を計測アンプのICを用いて改良した.これにより,データの安定性が向上し,プロトンの出入りの順番と光反応サイクルに関する知見をさまざまなポンプについて検討できるようになった.
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