平成21年度の研究活動によって明らかとなったことを以下に記す。 1)Argonaute-1は核内においてsiRNAと複合体を形成する。 Argonaute-1(以下Ago1)を強制発現させた細胞に放射線同位体によって標識されたsiRNAを導入し、核抽出液から免疫沈降によってAgo1を精製、放射活性を測定する実験系を確立した。その結果、Ago1は核内に存在し、siRNAと結合している事を明らかにした。 2)Ago1-siRNA複合体は、直接標的DNAに結合する能力を持つ 核より精製したAgo1-siRNA複合体は、in vitroにおいて、標的配列特異的、ATP依存的に結合することを見いだした。RNA増幅等、従来考えられてきたモデルを考慮せず、直接標的DNA配列に結合しうる事が明らかとなった。 以上、1)および2)によりAgo1がTGSの中心的機能を果たす事が強く示唆された。一方、他のAgoファミリーについてTGSに果たす機能は、さらに詳細な検討が必要と考えられる。Ago2、Ago4は免疫染色によってそのほとんどが細胞質の局在することが明らかとなり、TGSについて寄与するかどうか不明である。Ago3はAgo1と同様に核にも細胞質にも局在するが、免疫沈降実験では、siRNAを核内で直接結合している結果は見いだせていない。以上の結果は、現在論文投稿中である。 3)in vitro methyltransferase assayの構築 免疫沈降によって精製したヒストンメチル化酵素の活性を、in vitroにおいて評価する系を樹立することに成功した。この実験系を含む、Ago1とヒストンメチル化酵素の結合を明らかにした論文を、現在準備中である。 4)Ago-siRNA複合体の直接標的DNA結合性についての簡潔な評価系の樹立については、現在進行中である。
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