熱ショックタンパク質(HSP)は、タンパク質変性ストレスに対して防御を行う重要なタンパク質である。熱ショック転写因子(HSF)は、プロモーター領域のHSEと呼ばれる特定の塩基配列に結合しHSP遺伝子の転写を制御する。HSFは、塩基配列が多少異なる多様な配列に結合することが可能であり、この塩基配列の違い(HSE配列特異性)が、厳密な転写調節において重要であると考えられる。さらなる詳細な解析のため、以下の1)と2)について検討し結果を得た。 1)HSE配列特異性の決定に関与するHSFの新規機能ドメインの解析ヒトHSF1分子の中央部にHSE配列特異性に大きな影響を与える約15アミノ酸からなる部分を同定した。このアミノ酸領域が、ヒトHSF2やHSF4b、他の生物のHSF(線虫、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュ)でも非常に良く保存されていることを見出した。これらのHSFから相同領域を欠失すると、おのおののHSE配列特異性が変化した。変異タンパクの機能について解析し、この相同領域がHSFの三量体形成領域と相互作用し、HSFの三量体形成とDNA結合を阻害することを明らかにした。 2)ヒトHSF1標的遺伝子の同定と解析熱ショックにより転写が誘導されるHSF1の標的遺伝子候補として、GADD45B(growth arrest and DNA-damage-inducible beta)とRGS2(regulator of Gprotein 2)に注目した。これらの遺伝子の発現は、さまざまなタンパク質変性ストレスにより誘導された。プロモーター解析により、おのおのの遺伝子にHSE配列を同定し、クロマチン免疫沈降法により、HSF1が結合することを確認した。これらの遺伝子は、細胞のガン化などに関与するといる報告もあり、細胞増殖とHSF1の関連について考察できる点においても興味深い。
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