細胞の増殖、分化や細胞が持つ独特の機能の発現は遺伝子発現制御の他に、合成したタンパク質(或いは脂質、糖、核酸)を適所に配置するための細胞内輸送制御に大きく依存しており、細胞内輸送の異常は様々な疾患の原因となる。我々はDLK-JNKシグナル系を切り口に、モータータンパク質或は細胞骨格を介した細胞内輸送制御の分子機構解明に向けた研究を進めている。モータータンパク質を介した制御に関しては、JIP1によるキネシンモーターの活性制御に焦点を当てた研究を展開している。JIP1はDLK-JNK経路の足場となると伴に、モーター分子であるキネシンとも結合するタンパク質で、これとJNK及びキネシンとの結合様式の詳細な解析を行った結果、JIP1分子上にキネシンとの結合を制御する領域のあることを見出した。さらにこの領域に結合するタンパク質を同定し、これが細胞内におけるキネシン活性化にどの程度寄与しているかを現在検討している。一方細胞骨格を介した制御に関しては、DLK-JNKシグナル系がキネシン、ダイニンといったモーター分子の足場となる微小管の安定性の制御に関わることを見出した。これは大脳皮質神経細胞初代培養を用いたRNAiベクター導入実験によりDLK、 JIP1の軸索形成における機能を検定する実験システムを用いたもので、現在その分子基盤解明に向け微小管のダイナミクスを制御するタンパク質がMUK/DLK-JNK経路のターゲットとなる可能性について検討を進めている。
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