研究課題/領域番号 |
21570184
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
平井 秀一 横浜市立大学, 医学研究科, 准教授 (80228759)
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キーワード | 細胞内輸送 / JNK / JIP / キネシン / 微小管 / 神経軸索 |
研究概要 |
細胞の増殖/分化や細胞が持つ独特の機能の発現は遺伝子発現制御の他に、合成したタンパク質(或いは脂質、糖、核酸)を適所に配置するための細胞内輸送に大きく依存しており、細胞内輸送の異常は様々な疾患の原因となる。我々はDLK-JNKシグナル系を切り口に、モータータンパク質或は細胞骨格を介した細胞内輸送制御の分子機構解明に向けた研究を進めている。 これまでにDLK-JNK経路は細胞内輸送経路となる微小管の制御に関わることを見出しているが、23年度中は主としてDLK-JNKシグナル系がJIP1とキネシンの結合に与える影響について検討してきた。前年度までの研究結果からJIP1の特定C末端領域に結合する因子がJIP1とキネシンの結合制御に関わっていることが予想されたので、これの同定を目的とし、神経芽細胞種由来のNeuro2a細胞を用いてJIP1結合タンパク質の同定を試みた。これにより、JIP3が少なくともNeuro2a細胞においては主たるJIP1結合タンパク質であることが判明するとともに、JIP1上の特定C末端領域へのJIP3の結合がJIP1とキネシンの結合を著しく増強する事が明らかとなった。さらに、DLKのJIP1への結合は、JIP3とJIP1の結合を抑制し得る事を新たに見出した。一方、JNKのJIP1への結合及びJNKの活性化は、JIP1とキネシンの結合に影響を与えなかった。 キネシンモーターの活性に影響を与える結合分子はJIP1を始めとして複数知られているが、これらとキネシンとの結合を制御する分子機構についてはほとんど解っていなかった。以上の結果は、この問題の一部を解決するもので、細胞内輸送の制御機構の理解に寄与するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的であったDLK-JNKによるJIP1を介したキネシンモーター分子の活性制御の可能性の検証と分子機構の解明について一通りの決着を見たのに加え、DLK-JNKが細胞内輸送の足場となる微小管の制御に関わる事を明らかにする事が出来、新たな展開を見た。
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今後の研究の推進方策 |
1)JIP1とキネシンの結合が、キネシンの活性に与える影響を、GFP-JIP1を導入したNeuro2a細胞を用いたfluorescence recovery after photobleaching(FRAP)法により評価する。 2)これまでのJIP1とキネシンの結合制御に関する研究成果を論文にまとめて発表する。 3)本研究の課程で明らかになってきたDLK-JNKシグナル系による微小管制御について、今後分子機構に切り込んだ研究が出来るように準備を進めて行く。
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