Te12は真核生物間で高度に保存されたPIKKファミリータンパク質(PIKKs)の相互作用因子である。PIKKsは細胞機能制御に関わるキナーゼ群であり、DNA複製や損傷のチェックポイント機構にかかわるATM/ATR、細胞増殖因子と栄養源に応じ細胞成長と増殖を制御するTOR、ヒストンアセチル化酵素複合体の構成要素としてクロマチン構造制御を介した転写制御に関与するTRRAPから構成されている。分裂酵母においても各PIKKsの機能ホモログ(Tel1^<ATM>/Rad3^<ATR>、Tor1/Tor2^<TOR>、Tra1/Tra2^<TRRAP>)が存在している。Tel2は、Tti1(Teltwo interact protein 1)とヘテロダイマーを形成し、PIKKsと相互作用することが報告されているが、Tel2のPIKKsへの相互作用の意義は未だ明らかとされていない。 Tel2が複数の異なるPIKKsをどのように区別してそれぞれ制御するのかを明らかにするために、それぞれのPIKKsが関与する経路に特異的な欠損を示すtel2の条件致死変異株の取得を行った。その結果、Tel1^<ATM>/Rad3^<ATR>が関与するDNA複製及び損傷チェックポイントに欠損を示す変異株(tel2-F187)、Tor1/Tor2^<TOR>が関与する高温及びRapamycinに感受性を示す変異株(tel2^<L815P>)の単離に成功した。tel2-F187変異株において、Tel2とTti1やRad3^<ATR>との結合に異常は見られず、Rad3^<ATR>やTel1^<ATM>及びTor1/Tor2^<TOR>タンパク質の安定性も野生株と顕著な違いが見られなかった。このことから、tel2変異株の条件致死性の原因は、Tel1^<ATM>/Rad3^<ATR>およびTor1/Tor2^<TOR>の不安定化によるものではないと考えられた。これらの結果は先行研究によるモデルと合致せず、新たな制御機構の存在を強く示唆するものである。
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