IRBITが、種々の標的分子をそのリン酸化パターン依存的に調節することを明らかにするため、IRBITのリン酸化状態を、1)Mass spectrometry、2)Phos-tag SDS-PAGE解析、によって、それぞれ解析した。その結果、IRBITは、最低6カ所のリン酸化が入っていることを明らかに出来たが、そのリン酸化部位は、通常のtandem Ms/Ms spec.解析では、リン酸化ペプチドの単離が出来ず、リン酸化部位の同定には至らなかった。これは、IRBITの多重リン酸化により、リン酸化ペプチドが効率よくイオン化されなかったことによると思われ、今後解析方法の検討と開発の必要性がある。Phos-tag SDS-PAGE解析により、IRBITのリン酸化状態に3つの状態が存在すること、そして、この各々状態のIRBITが、IP_3受容体、Na/HCO_3-共輸送体に対して、異なった結合親和性を示すことを発見した。更に、これらのリン酸化状態は、細胞外環境、殊に、浸透圧変化に曝される時間によって刻々と変化することを発見した。このことは、IRBITが、細胞外環境に対してそのリン酸化状態を変化させ、種々の標的分子の結合・生理活性を調節していることを強く示唆しており、本研究を推進する上で、極めて重要な知見である。また、IRIBTの標的分子として、新たに、FiplLという、mRNAのpoly(A)付加反応に関与する分子を発見した。IRBITとFiplLとの結合もやはり、IRBITのリン酸化依存的であり、IRBITが極めて多彩な機能調節分子として、そのリン酸化を介して働くことを示した。更に、IRBIT関連分子であるLong-IRBITを発見し、これはIRBITとは異なり、IP_3受容体とは結合せず、中枢神経系でも異なった発現パターンを示すことを明らかにした。
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