研究概要 |
本研究は、染色体を安定に維持する機構(染色体安定性システム)に関与する分子を同定し、このシステムを構成する分子ネットワークを明らかにすることを目的とする。平成21年度には、酵母の紡錘体チェックポイント分子MAD2のヒトホモローグの1つであるMAD2L2と結合する分子として新規分子C13orf8を同定し、この分子が染色体分配に重要な役割を果たしている可能性を見いだした。そこで平成22年度はこの結果をふまえ、C13orf8の染色体分配における機能を解析した。C13orf8はZnフィンガー領域および我々がWKモチーフ、SPEモチーフ、FPEモチーフと名付けた特徴的な繰り返し配列を有する。C13orf8は染色体およびスピンドル上に存在し、C端側の領域が染色体とスピンドルへの局在に関与する一方、FPEモチーフを含む領域はキネトコアを含むスピンドルに局在することがわかった。C13orf8をノックダウンした細胞では染色体の赤道面への整列の異常が認められ、これは姉妹キネトコア間に張力が生じた際にキネトコア-微小管結合を維持できないためであることが示唆された。キネトコア-微小管結合の維持にはFPEモチーフを含む領域が関与しており、これに対してC端側の領域は抑制的に働くことが予想された。またC13orf8は細胞分裂期にCDK1依存性にリン酸化され、FPE領域のリン酸化がC端側の領域による抑制を解除するというモデルが考えられた。これらの結果より、C13orf8はキネトコア微小管結合の維持に関与する分子であることが明らかになり、我々はC13orf8をCAMP(Chromosome alignment-maintaining phosphoprotein)と命名して発表した(EMBO J,2011)。現在CAMPの機能についてさらに解析を進めている。
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