研究課題
高等真核生物では細胞膜を介して細胞間の情報交換を行い個体の恒常性を維持している。細胞外より受け取った情報は多くの場合、遺伝情報発現の場である核へと伝えられる。私は、ある状況下において細胞膜に発現する膜貫通型増殖因子が、小胞輸送により核膜へ輸送されることを明らかにしてきた。細胞にとって外界との接点である細胞膜に存在する分子と、核との間にコミュニケーションが存在するという考えは生理的あるいは病理的な種々の現象に大きな意義を持っている。そこで核膜へ輸送される細胞膜タンパク質が、核膜において担っている機能を明らかにすることを目的として本研究を行ってきた。昨年度までに、EGFファミリー分子amphiregulinの核膜局在化により、ゲノムワイドにヒストンH3の9番目のリジンのメチル化(H3K9me3)が亢進すること、そしてさらに同時に遊走能が亢進すること、H3K9のメチル化に依存した細胞遊走調節が存在することを見出していた。そこで、今年度は、クロマチン構造変化による細胞運動調節の分子メカニズムを探った。その結果、クロマチン構造変化に応答して、ゴルジ体構造が制御されていること、その制御には核膜タンパク質SUNとnesprin (LINC complex)が関与していることを見出した。さらに、SUNタンパク質に結合するゴルジ体関連タンパク質を見出しており、これら複合体形成が、クロマチン構造により調節されていることが示唆される。これらの結果は、これまで、細胞質の情報を核内に伝達すると考えられていた、LINC complexが、クロマチンシグナリングを細胞質に伝えていることを示唆しており、非常に興味深いものである。
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 420 ページ: 721-726
DOI:10.1016/j.bbrc.2012.03.045
Pathobiology
巻: 78 ページ: 253-260
10.1159/000328061