細胞は自分の形をモニターしており、変形し過ぎた場合にはそれを戻すようなフィードバック機構があるに相違ない。このような機構が細胞の形態を維持し、細胞質を等分に分割することを補償するシステムではないかと考え、本研究ではこの分子機構を解明することを目的とする。 1) 細胞を細いガラス管で吸引した時、吸引された細胞質は吸引され続けるのではなく引き戻そうとする。この時、ミオシンが吸引された細胞質の先端に集合し、そのモーター活性が働いて引き戻す力を発生している。 2) 分裂細胞の上から寒天のシートをかけて物理的圧力を加えると分列面でのミオシンの集合量が増加する。 3) 発癌抑制因子であるPTENはミオシンと同じように分裂細胞では分裂面に局在がみられる。PTEN遺伝子欠損細胞では分裂面に集合するミオシン量が減少した。PTEN欠損細胞では吸引実験でミオシンの集合がみられない。また、ミオシンに先立ち吸引細胞質先端に集合することから、PTENはメカノセンシング時のミオシンの集合の制御する上位シグナルであると考えられる。 4) 最近、ミオシンの分裂面での滞在時間が極に比べ長いことがわかってきた。これがミオシンを分裂面に集合させるための1つの機構と思われる。連携研究者の上田との共同研究で、ミオシンの頭部のみを持ち、かつアクチンへの結合時間が長い変異ミオシンにGFPをつけた遺伝子をミオシン欠損の粘菌細胞で発現させた。このミオシンは野生型のミオシンよりも分裂面に多く局在した。分裂面の機械的な力とアクチンの構造、ミオシンの結合量には関連性があり、今後詳細に検討したい。
|