細胞運動は、発生過程や免疫応答などの正常な生命活動だけでなく、癌の浸潤・転移過程など様々な病気の場面でも観察され、その分子メカニズムを明らかにすることは、これらの現象を理解するうえで、極めて重要だと考えられる。外界から刺激があると、細胞は刺激の方向を認識し、前後の極性を形成し、移動を開始する。これまでに我々は、ARFが好中球の細胞運動に極めて重要な働きをすること、さらにARFの活性化因子であるGBF1が、細胞運動に深く関与すると共に、その際のARFの活性化にも関与していることを見出している。そこで本研究では、細胞が運動する際、GBF1が、どのように活性化されるのか、またGBF1によって活性化されたARFが、どのように細胞運動に関わっているのかを明らかにすると共に、GBF1遣伝子欠損マウスを作製し、生体内においても、培養細胞と同様のメカニズムが使われているのかを検証し、細胞運動時に見られる極性形成のメカニズムの一端を明らかにすることで、細胞運動の分子メカニズムの解明を目指している。 本年度は、GBF1によって活性化されたARFの細胞運動における役割を調べるために、GBF1の発現抑制によるRhoファミリータンパク質の影響を調べた。その結果、GBFIの発現をsiRNAによって抑えると、fMLPで刺激を与えた際の活性化型Rac1の量が減少し、さらに、Rac1の局在も本来局在する細胞前端部だけでなく、それ以外の部分にも局在することも明らかとなった。 さらに、本年度は、生体内においても、培養細胞と同様のメカニズムが使われているのかを調べるために、GBF1遺伝子欠損マウスの作成を開始した。
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