分裂酵母は栄養源が枯渇すると休眠細胞である胞子に分化する。このとき、細胞膜に局在するシンタキシン1オルソログPsy1は、細胞膜から消失し、代わって将来胞子の細胞膜となる前胞子膜へと局在をダイナミックに変化させる。この局在変化はPsy1特異的に起きるため、減数分裂時に起動するエンドサイトーシスが存在するものと思われる。本研究の目的は、このエンドサイトーシスの分子メカニズムを明らかにすることである。 エンドサイトーシスには標的タンパク質のユビキチン化が関わることが知られている。Psy1にはユビキチン化の標的となるリジン残基が12個存在するが、それをアルギニンに置換したさまざまな変異株を作製した。まず12個すべてをアルギニンに変えた変異株はエンドサイトーシスが阻害された。次に、どのリジンがエンドサイトーシスに必要なのかを調べたところ、N末付近に存在する3つの近接するリジンが重要であることがわかった。このことから、Psy1のエンドサイトーシスにもユビキチン化が必要であることが示唆された。 HECT型といわれるユビキチンリガーゼはエンドサイトーシスに必要なことが知られている。分裂酵母に存在するHECT型ユビキチンリガーゼ遺伝子のすべてについて破壊株を作製したが、どの破壊株でもPsy1の取り込みは阻害されなかった。このことからPsy1のユビキチン化には複数のユビキチンリガーゼが関わる可能性が示唆された。
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