研究課題/領域番号 |
21570205
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
柴沼 質子 昭和大学, 薬学部, 教授 (60245876)
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研究分担者 |
森 一憲 昭和大学, 薬学部, 助教 (60349040)
石川 文博 昭和大学, 薬学部, 助教 (60515667)
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キーワード | TGFβ / ミトコンドリア / 膜電位 / 活性酸素 / チオレドキシン / プロテインキチーゼC |
研究概要 |
マウス乳腺上皮細胞NMuMGをTGFβ刺激すると、ミトコンドリアの機能低下(膜電位(△Ψm)低下、活性酸素(ROS)産生)が観察され、細胞内が酸化状態にシフトする。本年度は、TGFβシグナルのうちこのミトコンドリア機能低下をシグナルとする経路について、ROS産生、△Ψm低下について、各々の役割を同定することを試みた。ROSについては、酸化還元酵素チオレドキシン(TRX)の発現系、△Ψmについては、ミトコンドリア枯渇細胞(ρ0)や脱共役剤CCCP、さらに、新たに樹立した脱共役タンパク質UCP2の遺伝子操作細胞を用いた検討を加えた。なお、TGFβ誘導性遺伝子のうち、これまでにミトコンドリア機能低下によりその発現が影響を受けることがわかっている代表的遺伝子、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-9、プラスミノーゲン活性化抑制因子(PAI)-1、フィブロネクチン(FN)を検討対象とした。さらに、△Ψmのシグナルを担う因子としてプロテインキナーゼC (nPKC)に注目し、検討した。 1) ROSの役割:TRXを細胞内に過剰発現させ、遺伝子発現への影響を検討したところ、TGFβによるMMP-9とFNの誘導が抑制された。PAI-1の発現は影響を受けなかった。 2) △Ψmの役割:脱共役剤CCCP前処理、或いはUCP2の発現量を予め操作することにより、PAI-1の発現が増強された。MMP-9、FNの誘導は影響を受けなかった。 3) nPKCの役割:△Ψm とnPKCの活性化との関係を検討したところ、△Ψmの低下によりnPKCの活性化体が増加することがわかった。一方、nPKCのうちδの発現を遺伝子操作して調べたところ、PKCδがPAI-1の発現を抑制的に制御していることがわかった。結果として、△Ψmの低下はPKCδの活性化を促進してTGFβによるPAI-1の発現を抑制的に制御していることが考えられた。
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