核膜は、細胞周期を通して変化する膜構造体で、特に動物細胞の細胞分裂期には、崩壊・再形成と著しい変化が起こる。核膜再形成初期には姉妹染色体周辺への核膜タンパク質の局在化、つまり核膜成分の集積が起こる。エマリンなどラミンA結合タンパク質は染色体中央領域へ、ラミンBレセプター(LBR)や核膜孔構成因子群(Nups)などは染色体周辺領域へと、染色体上の排他的領域への集積が観察されていたが、このような核膜ドメイン形成の分子基盤の詳細はわかっていなかった。核膜再形成時には、核膜孔も同時に構築される必要があるが、核膜と核膜孔の同調した形成制御についてもわかっていなかった。 核膜ドメインを基盤とした核膜核膜形成について解析するため、まず、分裂期中期染色体を足場とした核膜再形成を可視化するin vitroアッセイ系の樹立を構築し、この系を利用することで、中期染色体への核膜タンパク質群の局在・集積には細胞質因子とATP/GTPが必要で、核膜タンパク質によって局在開始時間や、必要とする細胞因子が異なることを明らかにしてきた。今年度は、LBRや膜貫通型NupであるPom121の染色体周辺領域への局在過程はImportinβの制御下にあること、LBRは細胞質因子依存性が分裂期進行状況によって異なることを明らかにした。分裂期後期染色体周辺にはLBRが既にターゲットしはじめているが、その後、細胞質非依存的に短時間で集積する。阻害剤実験から、この細胞質非依存的LBRの集積は、セミインタクト細胞内に残存するホスファターゼ活性が必要であることがわかった。また、核膜孔形成初期に必須とされているNupの1つ、ELYSは本アッセイにおいて、LBRと同様の局在変化することが観察された。ELYSとLBRのリン酸化状態に依存した結合や、ELYSが核膜と核膜孔の同調形成制御に関わることを示唆する解析結果を誌上発表した。
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