メンブレントラフィックは、細胞が正常に活動するために必須であり、その破綻は遺伝病をはじめとする様々な疾患に直結する。本研究では、この反応の選別・輸送シグナルとしてはたらく蛋白質のモノ・マルチユビキチン(Ub)化シグナルの実体を、申請者らが独自に開発し整備を進めてきたプロテオミクス解析技術を用いて解明することを目的とする。また、ユビキチン化とリン酸化の機能的クロストークについても解析することを目的としている。基質タンパク質に効率よく取り込まれるUb分子を作成するため、2残基のヒスチジンタグを、Ub分子C末端の様々な箇所に挿入した改変Ubを再度作成し、それぞれの取り込み効率を比較した。その結果、従来のin vivo Ub化実験に汎用されているHA-Ubやmyc-Ubと同様の取り込み効率を示す2-ヒスチジン挿入Ub分子を作成することができた。また、本年度の検討により、ユビキチンリガーゼTRIM32がタンパク質キナーゼAによってリン酸化されること、またこのリン酸化に依存して14-3-3タンパク質が特異的に結合し、活性調節を行うことを明らかにするとともに、このリン酸化部位を特定した。またこのリン酸化部位に14-3-3が直接相互作用することを確認するとともに、TRIM32のモノ、ポリUb化反応がこの相互作用によって細胞内で抑制されることを明らかにした。一方、TRIM32の野生体、またリン酸化変異体をそれぞれ安定に発現するHeLa細胞株とNIH3T3細胞株をそれぞれ樹立した。これらの株を用いて、リン酸化に交錯する細胞増殖能とTRIM32の細胞内分布を今後調査していく予定である。
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