脊椎動物における頭部感覚器官の原器であるプラコードの形成や、個々のプラコードの運命決定がどのような分子制御によるものかを明らかにするために研究をおこなっている。昨年度の研究で、三叉神経節プラコードの形成時には最初対応する領域で発現していたPitx1/2やPax6の発現が減少し、その代わりにPax3が発現、その後プラコードニューロンがBrn3aを発現するようになることがわかった。本年度はより詳細にPax3とPax6の発生過程における発現の推移について観察をおこない、Pax3発現領域の側方への拡大に伴ってPax6の発現領域が後退していくことや、Pax3/6発現境界のPax3側から三叉神経節ニューロンが分化/脱上皮化することがわかった。そこで、エレクトロポレーション法を用いたPax6の強制発現を予定三叉神経節領域におこなった。その結果、Pax3の発現が抑制された。また、三叉神経節プラコードマーカーのFGFR4や三叉神経節ニューロンマーカーのBrn3aの発現が失われた。一方、Pax3を強制発現させた場合、Pax6の発現が抑制された。これらの結果から、Pax3とPax6の相互抑制が三叉神経節プラコードの形成場所の決定に寄与していると結論づけられた。
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