脊椎動物の内耳背側にある三半規管は、その三次元的構造と機能が密接に結びついているうえ、脊椎動物の種に関わらず基本的な形態が共通しているので、形態形成機構の解析のモデル系として魅力的な器官である。この研究計画では、この三半規管の形態形成のメカニズムの一端を明らかにする事を目指した。 ゼブラフィッシュ三半規管形成は耳胞内部へ上皮が前方、側方、後方、腹側の4カ所から突出する事で始まる。この過程を細胞レベルでより詳細に解析するべく、GFPを耳胞で特異的に発現するGal4遺伝子トラップ系統の同定を進めるとともに、それらの系統を三次元タイムラプス撮影して解析して来た。その結果、耳胞内部への突出の先端で強くGFPを発現する系統が得られた。この系統を用いる事で、突出の伸長と融合の過程を観察することができる。また別の系統では、伸長しつつある突出の基部と、それぞれの半規管の仕切りの一部の細胞がGFPが発現している。この系統の解析から、これらの組織の伸長は、主に細胞の形態変化によってもたらされている事が明らかとなって来た。 一方ニワトリ胚を用いた系では、胚を殻から卵黄ごと取り出して、顕微鏡下で培養しながら72時間に渡って観察を続ける事が可能なシステムを開発した。今後の解析の有用な手段として期待出来る。
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