「形づくり」に関わる情報がゲノム上にいかにしてコードされているかという問題の解明が最終目標で、そのためのモデル系として脊椎動物の三半規管の形態形成過程を選んだ。本課題では、ニワトリとゼブラフィッシュをモデル生物として用いて、それぞれの利点を最大限に利用しつつ、細胞レベルと組織レベルでの解析をタイムラプス撮影などを駆使して行うとともに、この現象に関わる遺伝子のクローニングと機能解析も進めてきた。さらに二つの生物種での結果を比較することなどから、形態形成のメカニズムの解明を目指している。 ゼブラフィッシュのエンハンサートラップ系統(SAGFF237B)は、三半規管形成の初期段階でおこる耳胞内部への上皮の突出の形成・伸長あるいは融合の過程で興味深いGFPの発現パターンを示す。解析の結果、トラップされた遺伝子はSox5であることがほぼ確実となった。モルフォリノオリゴヌクレオチドを用いた遺伝子ノックダウン(機能阻害)により内耳の形態形成が阻害され、mRNAの注入によりその表現型は回復出来た。内耳における発現のパターンから、Sox5は三半規管形成の初期段階で重要な働きをしていると予想されたため、三次元タイムラプス解析により、上皮の形態形成運動にどのような変化が見られるか詳細な観察・解析を行っている。 一方ニワトリ胚を用いた解析では、Sox5に特異的な抗体を用いた免疫組織化学による正常胚での発現パターンの解析が進行中である。
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