研究概要 |
ゲノム情報が有りながら、これまで実験発生学的なアプローチが難しかったTakifugu属フグに対して、安価に入手可能なクサフグを用いて、外来遺伝子の導入によるトランスジェニック魚の作成や、モルフォリノオリゴの顕微注入による遺伝子破壊、等の実験手法を導入し、モデル動物化を試みた。平成21年より平成23年の研究期間に得られた結果を以下に示す。 1-フグOtx2遺伝子のエンハンサー解析 系統特異的なゲノム重複によって、他の系統では一つしか無いOtx2遺伝子が、真骨魚類ではOtx2a,Otx2bの2つの遺伝子に重複している。クサフグ胚を用いて、これら2つの遺伝子の発現パターンを記載し、それぞれの内中胚葉系に於ける発現を司る発現調節領域(エンハンサー)を明らかにした。両者の内中胚葉エンハンサーは、双方とも転写因子FoxA2が結合する事により活性化されるが、系統的な保存性は認められず、遺伝子重複後、独立にFoxA2をリクルートする形で成立したものと考えられる。以上の結果をMechanisms of Development誌に論文として発表した(Mech.Dev, 128, 653-661. 2012)。 フグ胚Otx遺伝子の機能解析 モルフォリノオリゴの顕微注入によりフグ胚の初期原腸胚において胚盾に発現するOtxla,Otx2b遺伝子のノックダウンを行った。それぞれの遺伝子単独のノックダウンでは明瞭な表現形は示されない事から、双方の遺伝子が相補的に機能している事が予想されたため、Otxla/Otx2b双方のモルフォリノオリゴを同時に顕微注入するダブルノックダウンを試みた所,脊索前板の機能不全に伴うと思われる頭部構造の異常が認められ、これらの遺伝子が頭部形成に重要な役割を果たす事が示されたと供に、フグ胚で遺伝子機能の抑制が可能である事が示された.現在、ダブルノックダウン胚内の遺伝子発現パターンの変化をWhole mount in situ hybridization法により解析を継続している。
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