背側の体型や鰭、側線、色素パターンなどの外部形態が体節形成期以降に体幹部全体にわたって腹側化するユニークな変異体メダカDouble anal fin (Da)を利用して後期胚から幼生期においてどのような機構で成魚の背腹パターンが形成されるかについてこのしくみを調べた。 Daではzic1とzic4の発現が体節特異的に低下する。最終年度である本年度は、体節背側でのzicの発現は初期に周囲からのBMPシグナルによって規定されること、一方発生後期にはその発現が自律的に固定されることを見出した。zic1:GFP/zic4:DsRed トランスジェニック胚において形成直後の体節を野生型胚にランダムな向きで移植すると,5 日後すべての移植胚の背側部分で蛍光がみられた.さらに, zic1:GFP/zic4:DsRed トランスジェニック胚の分節直後の体節を単離培養したところ, 培養開始1 日後に蛍光が失われていた. 以上から, 体節におけるzic1/zic4 の発現は, 周囲の組織による誘導を受けていることが示された。ところが, 体節形成後3 日(受精後5 日) の体節についても同様の単離培養を行ったところ, 少なくとも11日間継続して蛍光が観察され,発生後期における体節でのzic1/zic4 の発現は, 周囲の組織に非依存的に制御されていることが示唆された。本研究により、脊椎動物の外部形態の背腹パターンは、初期の背腹勾配によって直接作られるのではなく、いったん体節にzic1/4を介して背腹情報が二値的な背腹情報として集約され、体節由来細胞を介してつくられることがわかった。また、zic1/zic4はおそらく一生涯背側をパターニングし続けることが示唆された。このような時間的にも空間的にも規模の大きい発現ドメインはHox以外に知られておらず、からだ作りの新しいしくみが明らかとなった。
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