本研究は、カエル胚を用いて、BMPシグナルにより支配される胚腹部組織の分化制御の包括的な解明を目指すものである。今年度の研究では、カエル胚に存在する独立した2つの骨髄球の起源(aVBIとpVBI)を、それぞれの領域から作製した外植体における血球マーカーの発現を詳しく調べることにより、明瞭に示した。aVBI由来の骨髄球の分化にはBMPシグナルの活性化とWntシグナルの阻害が重要であり、Wntシグナルの阻害によって発現するNkx2.5およびSpibが骨髄球の分化に重要な役割を担っていることが示された。一方、pVBIにおける骨髄球や赤血球の分化にはWntシグナルは関与していないことが分かり、aVBIとpVBIの血球はその由来だけではなく、分化制御にも大きな違いがあることが示された。また、新規核局在因子val(ventrally associated leucine-zipper)の腹部組織分化における機能の解析をおこなった。val遺伝子の様々な領域を除く欠損変異体を作成し、その核内局在性、胚に注入したときの効果を調べた。その結果、全長455アミノ酸のうち、アミノ末端165アミノ酸を欠損した変異体が、胚の発生に障害を与える効果を持つことがわかってきた。発生の異常は、特に体節形成や血管形成にみられ、valが体節中胚葉や側板中胚葉の分化にかかわる因子である可能性がクローズアップされた。さらに、この変異体は核への局在性を失い、細胞質に存在していることも明らかとなった。現在この欠損変異体がドミナントネガティブに働くかどうかを検証中である。
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