研究概要 |
今年度の研究では、主に、カエル胚において新らたに発見された分泌因子rdd (repeated Ddomain-like)の発現解析を行なった。このタンパク質のアミノ酸配列をもとに合成したペプチドを免疫し、ウサギ抗血清を得た。この抗体は、rdd3およびrdd4を検出したのに対し、rdd2を検出しなかった。ウエスタンブロットによると、約28kDの内在性のタンパク質がこの抗体により検出された。このタンパク質は、mRNAの発現の上昇に合致して、胚に一過性に発現していた。また、タグ標識したリコンビナントrddタンパク質を胚細胞に発現する実験から、rddにはN-グリカン型糖鎖が結合していること、非還元下では高分子にシフトすること、分泌されたタンパク質は細胞間隙に局在して存在することなどが明らかにされた。これらrddの生化学的性質は、どのようにしてrddが生体内で働くのかを知る基礎データとして重要である。さらに、今年度は、胚の前方および後方領域から分化してくる2つの骨髄球の分化にVEGFが関与しているかどうかを検討した。内在性のVEGFの発現を阻害した実験から、後方の骨髄球の分化のみがVEGF要求性であることがわかった。同じことが、内皮細胞の分化因子であるL-KLF(KLF-2)のノックダウン胚でも見られたことから、内皮細胞の分化と骨髄球分化には密接な関連性があることがわかってきた。このデータを含む、骨髄球分化の制御に関する実験結果は、原著論文としてまとめ、現在投稿中である。また,カエルG-CSFの大腸菌発現系を構築し,抗体作成等の準備を進めた。
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