昨年度に引き続き、新規分泌タンパク質であるrdd (repeated D domain-like)の生化学的な性状を解析した。抗rdd抗体による内在性タンパク質の検出実験から、rddは血管内皮細胞の分布に一致して局在していることがわかった。抗体により胚の横断切片を染色したところ、染色は中胚葉領域に限局してみられたことからもこのことは支持された。またタグ標識したリコンビナントrddタンパク質を胚細胞に発現する実験から、rdd分子は非還元下で同分子と結合し高分子複合体をつくることが示唆された。これら生化学的性質は、どのようにしてrddが生体内で働くのかを知る基礎データとして極めて重要である。本年度は、この他に、アフリカツメガエル胚の前方から分化してくる骨髄球の分化制御のしくみを解析した。モルフォリノによる内在性NKx2.5およびGATA4の発現阻害実験から、骨髄球の分化には、心臓原基の形成に重要であることが知られているこれらの転写因子が必要であることが示された。骨髄球の分化に決定的な役割を担っていることがわかっているCEBPαおよびNkx2.5、GATA4はいずれもカノニカルWntの阻害因子であるdkklにより誘導されることから、これら複数の転写因子の協調的な働きにより中胚葉の未分化細胞から骨髄球への分化が運命づけられると結論された。さらに、アフリカツメガエルG-CSF(xlG-CSF)の大腸菌発現系およびヒト細胞株発現系を構築した。この組換えG-CSF存在下で造血器官由来の細胞を培養すると、成熟した好中球が出現することを確認した。総合すると、カエルにおける血管や骨髄球の分化のしくみと骨髄球の生理学的役割の解明に向けて、一定の進展がみられた。
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