研究概要 |
ウニ類の発生様式は間接発生と直接発生の2つに大別される。間接発生種は摂餌するプルテウス幼生をへて数週間かけて変態するのにたいして、直接発生種は卵黄に富んだ大型の卵から摂餌することなく数日で変態する。ウニ類の祖先的な発生様式は間接発生であり、直接発生は複数の系譜で独立に進化したと考えられている。直接発生の進化をもたらした発生メカニズムの変更を明らかにすることを目的として、直接発生種ヨツアナカシパンからmicrol,hesC,delta単離し、それらの発現をWMISH法によって解析した。その発現パターンを同じタコノマクラ目に属する間接発生種ハスノバカシパンの発現パターンと比較することによって、以下の違いをみいだした。(1)microl発現はいずれの種も小割球子孫に限定されるが、ヨツアナカシパン胚での発現開始は64細胞期で、ハスノバカシパン胚(16細胞期)よりも遅かった。この遅れはヨツアナカシパン胚でのwnt8発現の遅れ(Nakata and Minokawa,2009)と対応している。(2)いずれの種においても、発生とともにhesC発現の消失が小割球から大割球子孫細胞へと拡大するが、ヨツアナカシパンの方がより動物極に広がった。(3)いずれの種においても初期胞胚までdelta発現とhesC発現領域は相補的であるが、中期胞胚以降、ヨツアナカシパン胚でのみ両遺伝子発現領域の間にいずれも発現しない領域が現れた。これはヨツアナカシパン胚でのより大きなhesC非発現領域と矛盾しない。(4)このdelta/hesC非発現領域は間充織として移入した。ヨツアナカシパン胚では成体構造(体腔)形成のため間接発生種よりも多量の間充織が移入する(Amemiya and Arakawa, 1996)。このヨツアナカシパシ特異的なdelta/hesC非発現領域は直接発生の進化を説明する変更点であるかもしれない。
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