研究概要 |
アフリカツメガエル(ゼノパス)卵の細胞膜マイクロドメイン(ラフト)に局在し、受精時に必須の役割を果たしているゼノパスSrcチロシンキナーゼ(xSrc)の活性化メカニズムを明らかにするため、卵ラフトに局在して精子受容体として機能していると思われるシグナル伝達分子のうち、ウロプラキン複合体(UPIb及びUPIII)、三量体GTP結合タンパク質(α,β,γ)の遺伝子を単離し、HEK293培養細胞においてxSrcと共に発現させ、xSrcの活性に与える影響を調べた。その結果、ウロプラキン複合体はxSrcの活性を抑制しており、逆に三量体GTP結合タンパク質はxSrcの活性を亢進させる役割を果たしていることが明らかとなった。また、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3キナーゼ)の阻害剤がxSrcの活性化を阻害することを見いだすと共に、PI3キナーゼの産物であるホスファチジルイノシトール(3,4,5)三リン酸(PIP3)によってxSrcが活性化されること、PIP3の脱リン酸化を行うPTENホスファターゼの阻害剤であるbp(V)により卵の人為的活性化が起こることを見いだした。これらの結果は、ウロプラキン複合体によって抑制されている卵ラフト上のxSrcが、三量体GTP結合タンパク質およびPI3キナーゼを介した精子受容体シグナルによって活性化されることを示しており、精子と卵の相互作用に伴って卵内カルシウムイオンの上昇につながる受精シグナリングのメカニズムの初期過程に関する重要な知見が得られたと判断される。これまでの研究によりxSrcの活性化からカルシウムイオンの上昇に至る過程は解明されているので、本研究によって、アフリカツメガエル卵受精におけるウロプラキン複合体の生理機能の一端が解明されたと考えられる。
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