研究概要 |
本研究の目的は、第一に、Botryllus primigenus(単にイタボヤと呼ぶ)の生殖幹細胞はvasa^-,Piwi^+細胞から再生されること、第二に、Vasa^-,Piwi^+をVasa^+,Piwi^+に分化させる液性因子が存在すること、第三に、Vasa^-,Piwi^+細胞の少なくとも一部が、体細胞系列(Vasa^-,Piwf^-)に転換できる可能性のあること、以上の3点を証明することである。 5つの研究計画について、下記の成果を得た。計画1:イタボヤ生殖系列で発現する遺伝子の転写調節領域をクローニングする。結果:イタボヤゲノムよりVasa,Piwi,Nanosの5'上流域を得た。また、新たに未分化細胞のマーカーとしてnon-coding RNA(NCR)遺伝子をクローニングし、その5'上流域を得た。NCRはミトコンドリアrDNAによく似ており、5'上流域は強力なプロモーター活性をもっている。計画2:レポーター遺伝子を生殖系列細胞に導入する。結果:NCRレポーター遺伝子をリポフェクション法でホヤ生体に導入した。結果として、生殖系列キメラ、体細胞系列キメラのイタボヤをつくることに成功した。計画3:レポーター遺伝子産物の残存効果をみる。結果:少なくとも2週間、生体内でキメラ細胞の追跡が可能であることが分かった。計画4:標識された生殖系列細胞を培養する。結果:本計画に使用する予定のPiwiレポーター遺伝子がまだ完成しておらず、計画は継続中である。計画5:ホヤBMPの遺伝子クローニングとリコンビナントタンパク質の調製。結果:イタボヤBMPのcDNAについて、翻訳開始点が得られておらず、リコンビナントタンパク質の調製には更に時間が必要である。
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