研究課題
生殖細胞の形成と再生を、単体ボヤ(Ciona)と群体ボヤ(Botryllus)で比較した。胚発生過程で、Vasa陽性細胞は胚の後端に出現し、尾芽胚期の尾に位置を占めた。ここまでは、単体ボヤと群体ボヤで共通していた。その後、単体ボヤのPGCは、幼生の尾が吸収されることに伴い変態中の個体に移動し、消化管に隣接する血体腔で生殖巣を形成した。他方、群体ボヤは、尾芽期まで存在したVasa陽性細胞を幼生期・変態期を通して失い、無性世代を更新したのち、始めて個体の生殖域に出現した。単体ボヤでは、PGCを含む幼生の尾を切除しても生殖細胞が出現することから、Vasa陽性細胞の再生は、単体ボヤと群体ボヤに共通した特徴であるとの結論に至った。次に、群体ボヤのVasa陽性細胞がどの細胞から再生するかを調べた。Piwi/Myc陽性細胞は、生殖細胞と体腔細胞の一部で発現した。PiwiをRNAiすると、生殖系列前駆細胞が消滅した。また、MycをRNAiすると、Piwiの発現が著しく低下した。これらの結果は、Piwi/Myc陽性細胞が、生殖系列幹細胞として生殖巣と生殖細胞の再生に寄与していることを示唆した。また、群体ボヤのPiwi/Myc陽性細胞は、BMPに応答してVasaを発現することが分かった。BMPの下流で働くと予想されるSmad1/5を単離した。発現解析が待たれる。第3に、Vasa遺伝子とPiwi遺伝子の5'上流域約3kbをクローニングし、レポーターアッセイを行った。レポーター遺伝子産物は、vivoの生殖細胞を染めたがシグナルが弱く、生体で生殖細胞を追跡するには至らなかった。他方、non-coding RNA (NCR)遺伝子は、高いプロモーター活性をもっていた。レポーター遺伝子をホヤ培養細胞に導入し、その細胞を群体に注入し飼育した。その結果、培養細胞とその子孫細胞は、主に血球に分化し、一部は生殖巣に入ることがわかった。最後に、より上流の未分化細胞を求めて、SoxB cDNAを単離し、発現解析を行った。Botryllus SoxBは体腔細胞にのみシグナルが見られ、生殖系列では発現していないことが分かった。
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