研究課題
群体ボヤは、生殖巣と生殖系列前駆細胞(indifferent germline precursor cells, GPC)を失っても、ホヤ血中のPiwi陽性細胞からGPCを再分化できることを、H22年度までの我々の研究は示唆した。H23年度は、FISH二重染色、GPC阻害実験及び誘導実験により、上記仮説の検証を行った。FISHの結果:(1)血中のVasa^+細胞は、芽体に入ると、直接卵母細胞に分化する;(2)Vasa^-未分化細胞は、芽体に入るとGPCを形成し、徐々にVasaを発現するようになる;(3)Piwi^+細胞はMycを共発現している。RNAiの結果:(1)PiwiをRNAiすると、GPC形成が損なわれる;(2)MycをRNAiするとPiwi^+細胞数が激減し、GPC形成が損なわれる。以上の結果は、(1)血中に僅かに存在するVasa^+細胞<0.5%)は、雌性生殖細胞であること、(2)GPCは血中のVasa^-細胞に由来することを示すとともに、(3)PiwiはGPCの形成に必須であること、(4)MycはPiwiの発現維持に必要であること、(5)GPCは、Vasa^-/Piwi^+細胞から再生することを強く示唆した。Piwi^+細胞がGPCの供給源であることを更に補強するため、GPC誘導実験を行った。ホヤ群体にBMPを顕微注入したところ、本来、血中にVasa^+細胞はほとんど存在しないにもかかわらず、Vasa^+のGPC様細胞凝集塊が多数形成された。それらの細胞凝集塊は、全てPiwiを共発現していた。すなわち、ホヤの血中にはGPCのfounder cellとして働く生殖系列幹細胞(GSC)が存在し、GSCはVasa^-/Piwi^+/Myc^+の特徴をもつと結論した。本実験で用いたヒトリコンビナントBMP4は、Vasa^+細胞を誘導するだけでなく、体細胞系列未分化細胞(ヘモブラスト)の凝集、すなわちvascular bud形成も誘導した。我々は、BMP4が生殖系列と体細胞系列において、RACK1 (receptor for activated C-kinase 1)を誘導することを発見した。RACK1は、細胞増殖や細胞接着を仲介するScaffoldタンパクである。ホヤRACK1を機能阻害すると、細胞接着と生殖巣再生が著しく阻害された。この結果は、BMPの下流で働くRACK1がGSCによる細胞接着を仲介し、その細胞接着がトシガーとなってVasa遺伝子がONとなり、GSCからGPCへの分化が進むことを示唆している。
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