研究概要 |
古来、ニワトリは食料としてだけではなく、文化的要素を取り込んで種々の品種が作出されてきた。中でもシャモは、闘鶏を目的に特異的な人工選抜を受けてきた品種であり、またナガナキドリでは、美声はもとより約20秒以上も鳴き続けるという形質だけに特化して選抜されてきた、どちらも非常に稀な品種である。私は、この飼育目的が全く異なる品種の家禽化の過程をDNAレベルで追跡し、これらの品種の進化的起源を解明することを目的として、これまでにもmtDNA(Dループ領域)の配列解析とそれに基づく分子系統学的解析を行ってきた。そこで本研究では、闘鶏用に飼育されているシャモ64羽、美声を観賞目的とするナガナキドリ12羽とその他の観賞用日本鶏33羽において、DRD4遺伝子の第1エクソンから第4エクソンの総計1,140bpの塩基配列を決定し、配列解析を行った。その結果、エクソン1に存在するプロリン(P)のリピートの数において、シャモ(9個)とナガナキドリ(8個)の差異が見られた。このことは品種間における行動特性と遺伝子多型の関連性の可能性を示唆した。さらに、得られたそれぞれの配列をもとに、ニワトリのドーパミンでは初めてといえる、遺伝子機能予測ならびにタンパク質立体構造予測解析を行った。その結果、エクソン1のPリピートの部分は細胞外にあたり、エクソン3領域は、7回の膜貫通型受容体の細胞内ループにあたる部分であることが明らかとなった。またこの領域は、タンパク質の立体構造上の制約が弱く、多くの遺伝子多型が得られると推測された。そして、ニワトリで見ることができるこのリピート数の混在は、明らかにヒトによる人為淘汰がこのPリピート数の違いというものに反映しているものと考えられた。おそらくシャモの持つ9リピートは、闘争本能を維持する上では、必要な数であると推測される。
|