研究概要 |
日本列島各地の第四紀以降の堆積物から見つかっているニホンザルの化石を整理し直し、第四紀以降のニホンザルの地理的変異と年代的変化という観点から、ニホンザルの進化史に関して解析を行なった。今年度は初年度であるので、特に歯の細かな形態特徴を解析するために、ローランド社の接触式三次元計測器(Pixform Pro II)を購入し、計測を行っている。またニホンザルの歯牙化石の歯種同定を目指して、写真撮影で歯の咬合面の輪郭を抽出し、それを幾何学的形態解析法を用いて解析してみたところ、かなりの確率で歯種の区別ができることがわかった。この成果をまとめて国内の学術誌(「霊長類研究」)に投稿した(伊藤ほか、印刷中)。また岩手県花巻市の風穴洞窟と愛媛県大洲市敷水の採掘場から発見されていたニホンザル頭骨化石の内部構造をCT機器を用いて撮像し、現在その結果を現生のマカクザルや東アジア各地で見つかっていたマカクザルの頭骨化石と比較している。とくにベトナムから見つかっていたべニガオザルとされていた頭骨化石の解析結果は、論文としてまとめて国際誌(International Journal of Primatology)に掲載された(Ito et al., 2009)。また日本各地の後期更新世の地層から見つかっていたニホンザル化石の歯牙の計測をおこない、それぞれ現生種との比較を行って、ニホンザルの地理的変異と年代的変化について統計的な解析を行なった。その結果を論文としてまとめて,現在国内の学術雑誌(「哺乳類科学」)に投稿中である(西岡ほか、投稿中)。
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