研究課題
日本各地の遺跡などから発見されているニホンザルの化石標本を現生種と比較の上でその形態的変異を検討している。平成23年度は富山県黒部川流域の通称「サル穴」と呼ばれる洞窟から見つかった3000-500年前のニホンザル化石の解析を行った。発見者である富山大学理学部の柏木健司博士と協力して、現生種との比較を行う一方で、同洞窟から見つかっていたニホンザルの糞の産状についての報告をまとめて学会誌に投稿中である(柏木ほか、査読中)。また日本各地の更新世以降のマカクザル歯牙化石の計測データの解析結果を論文としてまとめて学会誌に出版した(西岡ほか、2011)。またニホンザルの祖先種と想定される日本周辺地域の化石種の検討を並行して行った。具体的には、韓国、中国南部(広西壮族自治区)、台湾などの更新世の遺跡から見つかったマカクザル化石のデータを収集し、ニホンザルとの比較検討を行った。台湾のマカクザル化石については英文の論文を国際専門誌に投稿し、現在印刷中である(Chang et al.,in press.)。韓国と中国南部のマカク化石についてもニホンザルとの詳細な検討をしており、現在記載論文を作成中である。また3次元計測器(3Dプロッター)を用いてこれまでに収集したマカクザルの遊離歯化石の複製模型からその外部形状を計測し、3Dソフトを用いて外部形態のコンピュータ上での解析をおこなっている。また研究協力者の伊藤毅が中心となって、マカク類の頭骨化石の内部構造をCT機器を用いて撮像し、その内部構造を解析し国際専門誌に発表した(Ito et al.,2011)。この研究結果をもとにニホンザルの頭骨における形態的特徴を環境適応の観点から検討中である。また化石標本との比較のため、四国地方で猿害駆除として殺された現生ニホンザルの遺体を回収し、骨格標本を作成中である。
2: おおむね順調に進展している
データの収集は順調に進んでおり、採取したモールドからキャストを作成し、3次元データの計測と解析を徐々に始めている。
これまでに収集したニホンザルを中心としたマカクザルの化石及び現生資料のデータを整理し、モールドを採取したものに関してはキャストを作成した上で3次元データを作成して解析を行う。また引き続き現生種の骨格資料の収集と化石標本の採集につとめる。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Journal of Human Evolution
巻: 63 ページ: 439-451
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哺乳類科学
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Anatomy Research International, New Models and Insights into Primate Evolutionary Morphology
巻: volume 2011, special issue
10.1155/2011/849751