研究概要 |
日本各地の遺跡などから発見されているニホンザルの化石標本を現生種と比較の上でその形態的変異を検討した。平成24年度は富山県黒部川流域の通称「サル穴」と呼ばれる洞窟から見つかった3000-500年前のニホンザル化石を検討した。一方、同洞窟から見つかっていた現生ニホンザルの糞の産状についての報告をまとめて学会誌に報告した(柏木ほか、2012)。また日本各地の更新世以降のマカクザル歯牙化石の計測データの解析を継続している。 ニホンザル(Macaca fuscata)の祖先種と想定される日本周辺地域のマカク化石種のデータ・キャストを収集し、現生及び化石ニホンザルとの比較を行っている。具体的には、韓国中部の後期更新世遺跡、中国南部の広西壮族自治区の前期~後期更新世の洞窟堆積物、台湾の中期更新世遺跡、タイの後期更新世とみられるマカク化石、中国北~中部の複数の中~後期更新世のマカク化石などのデータを、文献資料と化石標本キャストから収集した。台湾のマカクザル化石については英文の論文を国際専門誌で発表した(Chang et al., 2012)。また韓国の遺跡から見つかったマカク化石の再検討を行った論文を執筆した(Lee et al., in press)。特に韓国のマカク歯牙化石はニホンザルとの形態的な類似点が多く、ニホンザルの祖先種である可能性が高いことが確認された。 収集した歯牙化石のキャストは、接触式3次元計測器(3Dプロッター)を用いてデジタル化したイメージを作成している。また研究協力者の伊藤毅が中心となって、マカク類の頭骨化石の内部構造をCT機器を用いて撮像し比較検討を行っている。
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