京都大学霊長類研究所骨格標本資料室に保管されている「岩本コレクション」のニホンザル化石標本約50点を中心に、日本各地の遺跡などから発見されている化石標本と比較検討の上、ニホンザル化石の形態的変異を検討した。本年度は、日本各地のニホンザル化石の計測データの解析結果を基に研究のとりまとめを行った。また日本周辺地域(韓国・中国・台湾など)の更新世以降の遺跡から見つかっていたマカクザル化石との比較を行い、更新世のニホンザルの進化に関して古生物学的観点から検討した。 ニホンザルの祖先種と想定される化石種は、主に中国大陸の2種(Macaca robustusとM. anderssoni)が考えられてきた。両者の形態的な区別は非常に難しく、同種であるとする研究者も多かった。これまで行ったM. anderssoniの模式標本の詳しい解析から、両者が異なる種群に含まれる可能性が高いことが判明した。また、これまでに収集した中国大陸や韓国、台湾などのマカク化石標本との比較を通して、ニホンザルの形態的進化について検討した。特に接触型3次元計測器「3Dプロッター」と非接触型の「ワンショット3D測定マクロスコープ」の両方を、対象物に応じて使い分けて計測し、現在デジタルデータを処理して論文作成に使用している。
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