研究課題/領域番号 |
21570246
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研究機関 | 新潟県立看護大学 |
研究代表者 |
藤田 尚 新潟県立看護大学, 看護学部, 准教授 (40278007)
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研究分担者 |
鈴木 隆雄 新潟県立看護大学, 国立長寿医療研究センター, 所長 (30154545)
橋本 裕子 京都大学, 霊長類研究所, 教務補佐員 (90416412)
庄田 慎矢 奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (50566940)
川久保 善智 佐賀大学, 医学部, 助教 (80379619)
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キーワード | 自然人類学 / 古病理学 / 韓国古人骨 / 農耕の伝播 / 縄文時代人 / 結核 / 齲蝕 / 日本人の起源 |
研究概要 |
日本の弥生時代から古墳時代にかけては、日本と韓国は、文化的・人的交流が非常に盛んであり、日韓双方の遺物がそれぞれの国から出土する。1990年代末から2000年代初頭にかけて、韓国勒島人骨が発掘された。勒島人骨の形質は、概ね北部九州地方から出土する「渡来系弥生人」に類似し、日本の縄文時代人とは明らかに異なる。さらに東アジア的視点からの研究を推進するために、3次元計測や、顔面平坦度についての分析も開始している。古病理学的成果としては、勒島人骨の中に、骨結核と鑑別された個体が存在することが明らかとなり、日本でも最古の結核は弥生時代の遺跡から出ていることから、その関連性が注目された(Suzuki et al.2008)。また齲歯率は、勒島人骨が6%台、礼安里人骨が8%台と日本の縄文時代人と比較しても、かなり低率であり、日本の弥生人骨の齲歯率と比較すると、概ね2分の1-3分の1程度の罹患頻度である。日本の弥生時代中期相当の韓半島南部に、農耕や米作が存在しなかったとは考えられないことから、この低い齲歯率をもたらした要因を探ることも必要になる(Fujita and Choi,2008;Fujita et al.2011)。いずれにしても、今後勒島人や礼安里人の食性の考察に大きな手がかりを与えることであろう。また、齲歯率から見て、必ずしも弥生時代(韓国では相当期)に、日本列島全体が農耕を取り入れたとは考えにくく、遺跡の立地条件によっては、従来からの狩猟採集を主たる生業としていたことが推測される。教科書的な「弥生時代=農耕の伝播と拡散」という図式は必ずしも成立しないのではないかと思われ、今後の重要な検証課題となった。
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