冷え性に関して、アンケート調査および被験者実験を行った。「冷え性」に関するアンケート調査は、本学の女子学生147名を対象に行った。被験者実験は、事前に行ったアンケート調査をもとに被験者を選出した。実験は1月から2月において行い、被験者(冷え性:9名、非冷え性:7名、冷え性傾向:8名)を22℃、24℃に曝露したときの皮膚温の低下や曝露後の回復率などの生理反応と、温冷感や快適感などの心理反応を測定した。 アンケート対象者147名のうち、「冷え性」と回答したのは84名で、全体の51.7%の人が冷え性を自覚していた。冷え性自覚者は、「寒冷環境下において、他の人よりも寒さを感じる」「夏季でもたまに冷えを感じる」「夏季にたいていの人が快適だと感じるエアコンの効いた部屋で寒さを感じる」というアンケート項目において該当者の割合が高かったため、季節や室内外を問わず冷えを感じていることが示唆された。また、「冬季に寒さや指先の冷えのため目が覚めることがある」「寒さで血流の循環が悪くなり、指先やつま先に苦痛を感じたり変色したりする」という項目についても、冷え性自覚者で該当者の割合が高く、冷えが日常生活に支障をきたしていることも明らかになった。注目すべきは、「冬季に他の人よりも厚着をする」という項目については、冷え性の有無による影響は見られず、冷えを感じているにもかかわらず、日中の冷え対策(着衣量)が十分に行われていない可能性が示された。被験者実験では、温熱的に中立な環境であっても、冷え性自覚者は交感神経が緊張した冬型の皮膚温分布で定常状態を保っており、暖房としてはやや涼しい環境においては体幹部の皮膚温が高いことが示された。涼しさを感じ始める環境温度では、冷え性者よりも非冷え性者のほうが寒さや不快を敏感に感知している傾向が見られた。常に寒さに曝された状態に近い皮膚温分布である冷え性者は、軽度の寒さへの温熱的感受性が鈍化しており、そのことによって自律性・行動性の体温調節が遅れ、日常生活に支障が出るほどの冷えを被ってしまう可能性が示唆された。
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