人工環境への非適応者としての「暑がり」の特徴を調査するために、実験室実験とフィールド調査を行った。 1)実験室実験 20名の青年女子(21.3±0.6歳)を被験者とし、自己申告に基づき暑がり(HS群: 12名)と非暑がり(NS群: 8名)の2群に分けた。被験者は26℃(60% RH)の前室で20分間安静を保った後、28℃、30℃、32℃(50% RH)のいずれかの温度に設定された曝露室で60分間過ごした。実験中、身体7か所の皮膚温、舌下温、衣内湿度が測定され、同時に温冷感、快適感の申告が記録された。28℃への曝露60分目の平均皮膚温は、HS群33.6℃、NS群33.2℃であり、群間に有意差(P<0.01)が認められた。HS群は発汗量が多く、発汗開始時期も早い傾向にあったが、群間に有意差は見られなかった。両群とも、平均皮膚温と快適感の間に有意な相関関係が認められ、HS群の回帰直線の傾きはNS群より大きかった。HS群は平均皮膚温の上昇に伴い、温熱的不快感を生じさせやすい傾向にあることが示された。 2)フィールド調査 本研究の目的は「暑がり」が生活する住居の温熱環境とその状況での生理・心理反応をあきらかにすることであった。被験者は暑がり10名(以下HS群)、非暑がり10名(NS群)の青年女子であり、彼女らの自宅(もっとも長い時間を過ごす部屋)において調査が行われた。調査は7月から8月にかけて行った。気温、気湿は2分間間隔で1週間にわたり記録した。自宅に滞在時には、約1時間間隔で身体7か所(前額、胸、前腕、手背、大腿、下腿、足背)の皮膚温が放射温度計により測定された。同時に温冷感、快適感、着衣量が記録された。温熱的中立(暑くも寒くもない)を申告したときの室温はHS群27.2℃、NS群28.3℃であった。平均皮膚温と室温の間には両群とも有意な直線関係が認められたが、中立温感が得られると考えられる平均皮膚温34℃が得られた室温はHS群31.2℃、NS群28.7℃であった。被験者が発汗を感じたときの室温はHS群30.2℃、NS群30.7℃であり、両群間に有意差が認められた。室内での着衣量はHS群0.27clo、NS群0.25cloであり、群間に有意差は認められなかった。HS群の被験者は暑さに敏感であり、涼しい環境を好む傾向にあることが示された。また、エアコンを使用して快適環境を構築する傾向にあることも示唆された。
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