平成21年度は、ベニバナ属の系統解析に関しては、新たに入手したCarthamus teniusとC.dentatusを加え、これまでに解析したベニバナ属13種・亜種・変種と合わせて、核のSACPD遺伝子及び葉緑体のtrnL-FIGS領域の塩基配列をもとに系統解析を行った。その結果、C.teniusは、他の2n=20のAゲノムをもつ二倍性種のクラスターに含まれたが、C.dentatusは、2n=20を持つにもかかわらず、Aゲノムのクラスター、倍数性種がもつX、Yゲノムのクラスターの3つのクラスターのルートに位置し、3ゲノムの祖先的な種であることが明らかになった。そこでC.dentatusのゲノムを、新たにZゲノムと命名した。葉緑体IGS領域に関しては、C.tenius、C.dentatusともにA型の遺伝子型をもっていた。山形県在来品種「最上紅花」の多様性に関しては、7月に山形県内の紅花栽培農家を訪れ、聞き取り調査を行った。その結果、最上紅花は、毎年、不連続的に背の高いもの、低いものが決まって現れ、また、純系選抜が進んでいなかったかつてほどではないものの、白花、とげなし、針状葉などの形態変異個体も畑の中によく現れるという情報が得られた。実際に、今回の調査でもそのような変異個体を畑の中に見ることができた。また、農家の畑から採集したサンプルを用い、10プライマーセットでAFLP解析を行ったところ、最上紅花の品種内に平均で、系統の異なる岡山紅花の2品種間の変異の半分程度の遺伝的変異が存在することがわかった。20年以上自家採種を続けている農家も含め、4軒の農家の畑ごとの違いはみられなかったが、通常の個体と形態変異のある個体が別のクラスターに分かれた。これらのことから、最上紅花は品種内に遺伝的多様性をもち、その多様性が形態の変異に影響を与えている可能性が示唆された。
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