平成22年度は、ベニバナ属の系統関係に関して、キク科共通プライマーを用いた解析を行った。まず、公表されている6つのキク科共通プライマーからプライマーの選抜を行い、A39ならびにB12を用いることとした。両プライマーを用いた解析の結果、種間の系統関係について、これまで報告されているのと大きく異なるクラスタリングが得られたが、一部の配列がベニバナ属よりもアザミ属に近かったこと、同一の二倍体の系統を2回シークエンスしたところ異なる配列が得られたこと、倍数性種から1種類の配列しか得られなかったこと、などから、実験効率も含め問題があると考えられたため、次年度以降検証実験を行うこととした。最上紅花の多様性については、昨年度に引き続き、栽培の現地調査とサンプリングを行った。その結果、本年度も昨年度と同様、畑の中で形態レベルでの変異が観察され、さらに、サンプリングした個体のAFLP解析により同一の畑の中で昨年と同じ多型が観察された。これは、自家採種により畑の中に継続的に多様性が維持されるという在来品種の特徴を最上紅花が有していることを示している。最上紅花の遺伝的特徴に関しては、アジアのベニバナ48系統を用いたAFLP解析を行った。その結果、アジアのベニバナは、東アジアとそれ以外のアジア地域に大別され、サブクラスターレベルでも、おおよそ地域ごとに別れ、明確な地理的分化が見られた。最上紅花は、東アジアのクラスターに含まれ、その中でも朝鮮半島由来の系統と同じクラスターを形成した。このことから、最上紅花は朝鮮半島を経由して伝来したと考えられ、本研究課題の重要テーマの一つであった最上紅花の起源の解明について大きな成果を挙げることができた。また、最上紅花は品種内多様性があることが本研究で明らかになってているが、その品種内の違いは、系統間の違いよりは小さいことも明らかになった。
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