研究課題/領域番号 |
21580011
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
春原 由香里 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 講師 (00302539)
|
研究分担者 |
松本 宏 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 教授 (10199888)
|
キーワード | 除草剤 / 合成オーキシン / キンクロラック / 2,4-D |
研究概要 |
キノリンカルボン酸系の合成オーキシン系除草剤は、イネ科植物間に非常に高い選択作用性を示す。本研究では、そのような除草剤群の1つであるキンクロラックに着目し、高度なイネ科植物間選択作用性を引き起こす要因を解明することで、さらに望ましい高度選択性の薬剤開発に繋がる知見を提供することを最終目的としている。本年度は、キンクロラック耐性植物を3種(イネ、オヒシバ、シコクビエ)と感受性植物を4種(トウモロコシ、メヒシバ、ヒメタイヌビエ、エノコログサ)用いて、イネ科植物種でのキンクロラックの作用特性を幅広く解析し、成育抑制作用を引き起こす原因物質が植物種によって異なる可能性があるのか、そしてあるとすれば、どのような要因によってもたらされるのかについて検討を行った。その結果、キンクロラックの成育抑制作用の主な原因物質と考えられているシアンに対する解毒酵素であるβ-CASに関しては、同じ感受性の植物種でも活性自体がかなり具なり、感受性種のメヒシバやエノコログサでは、耐性種と同等の高い活性を持っていることが示された。また、シアン以外でキンクロラックの成育抑制作用の原因物質となっている可能性が高い物質として活性酸素があるが、感受性種の中でもH_2O_2の発生量や除去能に違いがあり、トウモロコシでは特に活性酸素の影響を受けやすい可能性が示唆された。これらのことから、キンクロラックの成育抑制作用の原因物質は植物種間で異なる可能性があることが考えられた。さらに、トウモロコシでのキンクロラックによる活性酸素の発生経路について、ミトコンドリア画分を用いて検討を行った結果、キンクロラックは、ミトコンドリアの電子伝達系に直接的に影響を及ぼし、その結果として、活性酸素が発生している可能性があることも推定されたが、これを明確にするためには、さらに詳細な検討が必要であると考えており、引き続き検討を行っていく予定である。
|