研究概要 |
イネ科植物間に非常に高い選択作用性を示す除草剤として、キノリンカルボン酸系の合成オーキシン剤が知られている。これらの剤は、未だその選択作用機構の詳細は解明されていない。合成オーキシン剤には化学構造により幾つかのグループが存在している。近年、ピコリネート系のオーキシン型除草剤であるピクロラムでは、オーキシン受容体(TIR1)ではなく、TIR1類似のオーキシン結合因子(AFBs)であるAFB4やAFB5によって、主に認識されて除草剤としての作用を発現している可能性が報告された。また、フェノキシ酢酸系のオーキシン剤である2,4-Dは、主にTIR1に薬剤として認識されている可能性も報告されている。したがって、オーキシン剤の化学構造に依存して受容体レベルでの認識特性が異なっている可能性がある。しかし、キノリンカルボン酸系の合成オーキシン剤がどのような受容体によって認識されているのかは未解明である。そこで、本年度は、基本骨格が異なるグループに属する合成オーキシン剤を比較薬剤として、キノリンカルボン酸系のオーキシン型除草剤を処理後に発現変動する遺伝子を網羅的に解析し、この薬剤群の受容体レベルでの認識特性を解明するための足掛りとすることを目的とした。 マイクロアレイ解析では、シロイヌナズナにピクロラム(ピコリネート系)、2,4-D(フェノキシ酢酸系)、キンクロラック(キノリンカルボン酸系)を処理し、処理20分、40分後に2倍以上の発現変動があった遺伝子を抽出し、階層的クラスター解析を行なった。その結果、処理20分、40分共にキンクロラックは、ピクロラムと同一のクラスターを形成し、2,4-Dは、それらとは遺伝子発現パターンがやや異なるグループに分類された。今後は、キンクロラックは、ピクロラムのようにTIR1ではなく、AFB4やAFB5によって、主に認識されて除草剤としての作用を発現している可能性について更に詳細に検討していく予定である。
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