研究概要 |
2008/2009年に九州育成コムギ品種ダイチノミノリと北海道育成コムギ品種ハルユタカ,さらに北海道育成コムギ2品種はるきらり,春よ恋を加えた4品種を供試し,山口では2008年11月13日(山口秋播)に,北海道では2008年11月11日(北海道初冬播)と2009年4月14日(北海道春播)に播種した.収量調査の結果,子実収量は,山口秋播ではダイチノミノリが多く,はるきらりが少なかった.北海道春播では,はるきらりと春よ恋が多く,ダイチノミノリが少なかった.北海道初冬播では,はるきらりが多く,ダイチノミノリが少なかった.すべての品種で北海道初冬播が,山口秋播や北海道春播より多く,ダイチノミノリでは山口秋播が北海道春播より多く,北海道の3品種では北海道春播が山口秋播より多かった.これら子実収量の多いものは,いずれも千粒重が重かった.登熟期間でのサンプリング調査の結果,千粒重の重いものは,開花後30日目以降の粒重増加が大きかった.さらに,開花後130日目以降に粒重が大きく増加したものは,登熟期間を通じての群落での物質生産が大きく,茎葉から子実への貯蔵養分の転流が遅れた.2008/2009年にダイチノミノリとハルユタカを相反交雑して得たF1粒供試し,これに着生したF2粒の粒重を調査した.ダイチノミノリを母親として得たF1(FIDH)に着生したF2(F2DH)粒は,ハルユタカを母親として得たF1(F1HD)に着生したF2(F2HD)粒よりも重かった.F2HD粒はダイチノミノリよりも軽く,ハルユタカよりも重かった. 第3小花に着生した粒のみについて調査したところ,F2HD粒は,軽い粒と重い粒の比が3:1に分離した.このことは,同化産物の供給が制限されるような条件下でハルユタカのもつ胚乳に存在する粒重を低下させる遺伝子が存在することを示唆した.
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