コムギの九州育成品種ダイチノミノリと北海道育成品種ハルユタカ、はるきらり、春よ恋を山口で秋播栽培、北海道で春播栽培および初冬播栽培して、収量および収量構成要素を調査し、登熟期間を通じて粒重、器官別乾物重および稈の糖含有率の推移を調査した。ダイチノミノリは、山口の秋播では、ハルユタカに比べ、千粒重が重く収穫指数が高く、収量が多かった。ハルユタカに比べ登熟期間を通じて全乾物重が大きく増加し、乳熟期から成熟期にかけて稈の可溶性炭水化物が大きく転流した。さらにハルユタカに比べ、植物体が緩やかに老化した。これらのことから、ダイチノミノリはハルユタカに比べ登熟末期にかけて粒重が大きく増加し、収量が多いことが明らかとなった。山口の秋播は、北海道の春播に比べ、栄養生長期が長かったため、全乾物重がすでに開花期において重かった。そのため乾物生長速度が、北海道育成の3品種において、登熟期間を通じて北海道の春播に比べ低かった。北海道の初冬播では、北海道の春播に比べ登熟期間が低温で長く経過し、千粒重が重く収量が多かった。はるきらりと春よ恋は、北海道の春播、北海道の初冬播ともに、ハルユタカに比べ、千粒重が重く収穫指数が高く、収量が多かった。はるきらりと春よ恋は、ハルユタカに比べ登熟期間を通じて物質生産が高く、登熟末期で粒重が大きく増加した。はるきらりは、山口の秋播では、ハルユタカに比べ、千粒重が重かったものの、全乾物重が軽く、収量が少なかった。はるきらりは、ハルユタカに比べ登熟期間を通じて物質生産が高く、粒重が登熟末期まで増加ものの、収量が少なく、湛水や過湿に対する耐性が弱かったと考えられた。一方、ダイチノミノリとハルユタカを相反交雑させて得られたF1粒ならびにF2粒の粒重分布の違いについては、山口の秋播で得られたサンプルが保存中に虫による食害を受け、解析に足るデータを得ることができなかった。この解析については、次年度の課題としたい。
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