山口ならびに北海道で栽培したコムギ4品種の登熟期間における器官別乾物重の推移を調査した。粒重は、北海道でははるきらりが登熟終盤にさらに増加することにより重くなったのに対して、山口ではダイチノミノリで登熟中盤からの増加速度が大きかったことで重くなった。全乾物重は、北海道でははるきらりが登熟終盤まで大きく増加し、山口ではダイチノミノリが大きく増加した。稈の糖含有率は、山口では登熟期間を通じて大きく減少し、北海道では一時増加した後に減少した。ダイチノミノリはどちらも高く推移するのに対して、はるきらりでは常に低く推移した。これら4品種の葉身をすべて除去したところ、除去直後に稈の貯蔵炭水化物を大きく消耗し、乾物重の増加が大きく抑制されるものの、しばらくすると同化能力が回復していることが明らかとなった。はるきらりは、葉身除去処理の影響が他の品種に比べて大きかったと考えられた。ダイチノミノリとハルユタカの雑種第1代(F1)種子を栽培した。着生粒を第1小花と第2小花のみに制限して、さらに植物体の葉身をすべて除去してF2粒の粒重分布を明らかとした。F2粒の粒重は、山口では40mgと重い粒での頻度を唯一のピークとする正規分布を示した。ハルユタカは粒数制限をすると、少ない粒に多量の同化産物が供給されて粒重が重くなった。、さらに葉身を除去することで植物体の同化能力が低下して粒重が軽くなった。一方、ダイチノミノリは粒数制限することで粒数が減少した分、植物体の同化能力が低下したため粒重は無処理区と同じになった。さらに葉身を除去しても残った同化器官の能力が回復するために粒重は無処理区、粒数制限区と同じになったと考察した。F1植物体とF2粒は、ダイチノミノリと同様の反応を示すことから、粒数が減少することで植物体の同化能力が低下することは、ダイチノミノリがもつ優性の遺伝的形質であろうと考えた。
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