研究概要 |
阿蘇の原野を開墾し1980年度から慣行化学農法条件下で畑作物を栽培してきた圃場を,1992年度に水田に造成・転換した圃場(8a)内に,1993年度から,無農薬条件とし,施肥条件を変更した試験区を作り,水稲を同一施肥条件下で15年間単作してきた水田を対象とし,16年目を迎える2009年度から,9試験区すべてを無施肥で水稲を栽培した供試品種はミネアサヒ,栽植距離30×15cm,ペーパーポット育苗第4葉抽出苗を1株3本植えで各年度5月20日前後に手植した.移植1週間後から生育調査,収穫期に収量および収量構成要素の調査を行いは,収量調査で得られた精玄米の食味成分である蛋白質含有量をケット食味成分分析計AN820で分析した. 15年目までは,化学肥料,ボカシ肥を施用した試験区では無施用区に比べ,移植上2,3週間後にはSPAD値は有意に高く,3週間後には分げつ発生による1株茎数も有意に多くなっていたが,無施肥1年目の2009年度には,区間に有意差は認められなかった.また,15年目までの収量は施肥区に比べ無施肥区では顕著に低かったが,無施肥1年目の2009年度には区間に有意差はなくなり,さらに,施肥区で有意に高かった精玄米中のタンパク質含量にも有意差は消失していた.以上のように,15年間連用施肥の残効は無施肥1年目でほとんど消失していることが明らかになった. 無施肥2年目の2010年度,収量および精玄米中のタンパク質含量の平均値間には有意差は見られなかったが,9試験区の収量と施肥15年目の収量との間には6.3%レベルの正の相関関係が認められ,連用施肥の残効を示す結果であった. 無施肥3年目の2011年度にも,収量および精玄米中のタンパク質含量の平均値間には有意差は見られなかったが,9試験区の収量と施肥15年目の収量との間には1.9%レベル,施肥12年間の平均収量と無施肥3年間の平均収量との間に0.54%レベルの有意な正の相関関係が認められ,連用施肥の残効を示す結果が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
有機質肥料および化学肥料の15年間連用施肥の蓄積と残効を評価する方法として,生育,収量,精玄米タンパク質含量に着目してきたが,計画案に従って,今後は,玄米中の同位体窒素分析と土壌分析結果の解析が必要である.
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