研究概要 |
環境保全型農業体系を構築する上で,施設栽培における病害虫防除にも化学農薬使用量を極力抑える減農薬栽培が重要な課題となっている.施設栽培においては,紫外線カットフィルムが用いられ,一部の病原性糸状菌や害虫に対して高い抑制効果が認められている.一方,紫外線は植物のアントシアニン形成,茎の伸長制御,ミツバチなど有用昆虫の行動などにも大きな影響を与える.しかし,市販の紫外線カットフィルムは,紫外線の全波長域をカットしているため,病害虫を防除できても作物の着色が阻害されたり,受精不良で奇形果になるなどの弊害が多発する.そこで本研究では,先ず,特定の波長域の紫外線のみをカットしたフィルムを用い,特定の波長域の紫外線が病害虫防除と作物の生理生態に及ぼす影響を明らかにした.その結果,吸汁性昆虫,特にアブラムシに対しては360nm程度まで紫外線を透過させても一定の効果が得られることを明らかにした.一方,代表的な糸状菌による病害であるウドンコ病に対しては,選択的紫外線カットの影響は顕著な物ではなかった.また,人工気象器を用いて,紫外線による作物の伸長制御について調べ,一定量の紫外線照射条件下でトマトやキュウリの苗の伸長生長が抑制されること,この現象に関わる細胞分裂と細胞伸長の制御機能を明らかにした.これらの,成果を平成22年度の国際学会で発表する予定であり,発表申し込みを行い,申請が受理されている状況である.
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