研究概要 |
環境保全型農業体系を構築する上で,施設栽培における病害虫防除にも化学農薬使用量を極力抑える減農薬栽培が重要な課題となっている.施設栽培においては,紫外域の波長をほぼ全て除去する紫外線カットフィルムが用いられ,一部の病原性糸状菌や害虫に対して高い抑制効果が認められている.その一方,紫外線は植物のアントシアニン形成,茎の伸長制御,ミツバチなど有用昆虫の行動などにも大きな影響を与える.このように,市販の紫外線カットフィルムは,紫外線の全波長域をカットしているため,病害虫を防除できても作物の着色が阻害されたり,受精不良で奇形果になるなどの弊害が多発する.そこで,本研究では選択的に紫外線をカットする被覆フィルムを用いて,平成21~22年にかけて,病害虫防除およびアントシアニンなどのポリフェノール合成の観点から研究を行ってきた.平成23年度では,主に選択的紫外線カットフィルムの光透過性の特性評価および,選択的紫外線カットフィルムによる果菜類の抗酸化活性について検証した.その結果,アントシアニンを合成しやすいナスや一部のレタスでは,選択的紫外線カットフィルムによって,抗酸化活性が大きく影響を受けることが明らかとなった.平成21~22年度の結果と合わせ,特にナス,レタスなどにおいては,ポリフェノール合成も含めて効果が著しいことを明らかにした.従って,これらの野菜類では,アントシアニン合成を阻害せずに病害虫防除を効果的に行うため,360nm以下の紫外線をカットするフィルムの利用が実用的であると考えられた.また,本研究で得られた成果を平成23年度の園芸学会東北支部会において口頭発表を行った.
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