研究概要 |
著者らは、'おさ二十世紀'の自殖第1代で、自家和合性ホモ個体'TH3'に全く自発休眠に入らない横山を交配して育成したF_1約200個体を育成・保有している。本年度は、これらの自発休眠導入の有無と低温要求量を明らかにしようとした。 親品種である横山、'TH3'並びにF1の約200系統の枝を11月から2月まで定期的に採取し、温室中で促成処理を行ない、自発休眠の深さの推移を調査した。同時に詳細な気象観測を行い、低温積算を計算し、各系統の低温要求量を評価した。 実験に用いた横山は自発休眠に導入しない系統であると考えられ、一方、'TH3'は約1400CUと比較的長い低温要求量を有していた。F_1個体の中には,'横山'より高い萌芽率を示す個体もみられ、また従来のニホンなしより確実に低温要求量の低い系統を多く含んでいたものの、低温要求量の分布は'TH3'よりであった。一方、これらのF_1個体は温暖化が進んだ中でのナシ産地を担う重要な育種材料になると考えられる。 一部のF1個体を用い、秋季から冬季にかけて低温と短日処理を行ったが、低温要求性のある個体はいずれも低温によってのみ自発休眠へ導入されたが、低温要求性の見られない個体はいずれの条件であっても休眠導入はみられなかった。したがって低温に反応して休眠が導入されること並びに横山とF1はその機構が欠落した個体であるものと思われ、この点に絞った自発休眠の機構解明が望まれる。
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