研究概要 |
'おさ二十世紀'の自殖後代でS_4^<sm>遺伝子をホモで持つニホンナシ系統TH3,台湾在来ナシ横山,およびそれらの交雑によって得られたF_1系統群の萌芽率を調査した.F_1個体は,S遺伝子の判定とSSRマーカーによる親子鑑定の結果から,全個体がこの両親に由来する後代であると同定された.全調査日において横山の萌芽率は60%以上であり,11月下旬~1月上旬までの間に自発休眠に導入されなかった.一方,TH3の萌芽率は常に横山に比べて低く,その値は12月上旬から1月上旬にかけて徐々に上昇した.いずれの調査日ともに,F_1個体が示す萌芽率は横山とTH3の萌芽率の間に広く分布した.全9回の調査日のうち8回の調査日において,F_1個体の萌芽率の平均値は横山よりTH3の萌芽率に近い値を示した.そこで,TH3が自発休眠の深度に関する優性遺伝子をホモで持つと仮定してχ^2検定を行ったが,この仮定は棄却された.これらの結果から,低温要求量を決める遺伝要因にはQTLが存在すると考えられた.多くのF_1個体の落葉期は,TH3の落葉日に比べて横山の落葉日に近かった.一方,F_1個体の展葉期は,横山とTH3の展葉日のほぼ中間にあたる4月9日に集中していた. 一方、得られたF1,F2系統の中から低温要求の極めて少ない個体を選抜するとともに、高接ぎにより増殖し花芽着生や樹体成長、果実特性を調査し、成長特性を明らかにした。選抜された中で、No.72及びNo.74は低温要求量が300CU程度とこれまでのナシ栽培種にはない低さであり、また果実品質も果重が400g程度、糖度が13度程度で花芽の着生が良好であった。
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